Minato's memo

旅・エンタメ・日々の覚書

ジンクスを打ち破れ!(1)競演 ラフマニノフ

2月に入りました。もう五輪が目の前です。小ネタ系を全くやっていないので、少しページを埋めようと思います。

 前回のバンクーバー五輪でジンクスネタを書いたのですが、最近大手メディアが
こぞってネタにするようになったので、それでは面白くない、ということで天の邪鬼企画w
 
ロシアの作曲家、ラフマニノフの楽曲は「演じる者を選ぶ」曲とも言われています。美しく繊細、かといえば重厚で荘厳なメロディはピアニストとしても優れていたラフマニノフの技巧から生まれています。その選ばれし者のためのラフマニノフ浅田真央選手が「ピアノ協奏曲第二番 第一楽章」、パトリック・チャンが「エレジー」を使用します。どちらもさすがという仕上がりで、それ故不遇に終わらせたくない。特に浅田選手のプログラムには過去の偉大なるスケーターへのリスペクトを感じます。そんな過去のスケーターの名プログラムをおさらい。
 
1991ー1992年 伊藤みどり(日本 女子シングル) FS
ピアノ協奏曲第一番 第一楽章〜第二番 第三楽章
50年に一度の天才、伊藤みどりさんの五輪銀のプログラム。ワインレッドの衣装に銀の薔薇の模様が美しい衣装でした。元々は第一楽章のみで構成されていましたが、終幕が盛り上がらないということで、全日本後に第二番の第三楽章が追加編曲されたので、このバージョンはアルベールビル五輪での演技が唯一のお披露目となりました。この時のプログラムはロシア人(ワシリエフだったと思うんですが記録未詳)で技術難度もさることながら、振り付けも繊細で難しい内容でした。不調だった原因のひとつだったと思うんですが、編曲を変えたところが後に何度も繰り返し流される「トリプルアクセルが決まった瞬間」として使われるというのもドラマを感じます。浅田選手にはトリプルアクセルの系譜を辿る者としても、みどりさんの妹弟子としてもラフマニノフを使うのは宿命だったのかなと思うのと同時に今回の演技で22年来の呪縛を解いて欲しいなと願っています。
 
1994年 ミシュクテノフ&ドミトリエフ(ロシア ペア) FS
ピアノ協奏曲第二番 第一楽章
ロシア人によるラフマニノフ第二番、敵が強すぎたためにリメハンメル五輪銀となりましたが(金はゴルデーワ&グリンコフ)技術スキルはこちらの方が高かったです。第一楽章の終幕の盛り上がりが本当にぞくぞくする内容で、アナウンサーも演技後思わず「2人の世界」と発言してしまったくらい、見ている者を切なくさせる内容でした。白と黒のグラデーションのタイツ衣装も刹那的な美しさを良く表現していました。
 
1996年 チェン・ルー(中国 女子シングル) FS
ピアノ協奏曲第二番 第二楽章
第一楽章は非常に良く使われるので聞いたことがある人も多いと思うのですが、第二楽章で演技してるのは記憶の限りでは彼女だけです。前年のワールドチャンピオンで追われる立場で迎えた1996年ワールドは歴史に残って欲しい、名勝負でした。ベルベット調のシンプルなラインのえんじ色の衣装でチャンピオンの品格漂う雰囲気とピアノの調べだけで紡がれる繊細な音の中での演技。女王というものはこういう人をいうんだろうなと思わせる美しい演技でした。旧採点の芸術点で満点を2つ。この時の金はミシェル・クワン。彼女もまた、去年の「幼い」と言われた雰囲気をがらりと変えて「サロメズダンス」を妖艶に演じての優勝でした。フィギュアの女王というプライドが交錯した瞬間でした。
 
1998年、2002年 ミシェル・クワンアメリカ 女子シングル) SP
ピアノ協奏曲第3番・悲しみの三重奏曲
「ミス・パーフェクト」と呼ばれたクワンの、真骨頂ともいえるSPです。SPという短い時間の中であれだけの世界観をつくれるスケーターはやはり稀少。音のひとつひとつを丁寧に拾った演技をしました。クワンの悲劇はFSで常に逆転されていたこと。届かぬ想いを音楽に乗せ、時に涙していた姿が切なかったです。クワンは出場が幻となった2006年トリノ五輪で「前奏曲嬰ハ短調」通称鐘〉を滑る予定でした。どんな演技だったのかな。
 
2005年 ジェフリー・バトル(カナダ 男子シングル) SP
前奏曲嬰ハ短調」通称鐘〉
浅田選手のバンクーバー五輪での演技は管弦楽編曲バージョンで、こちらはピアノアレンジバージョン。同じ旋律を繰り返す、表現が難しい音楽を、全身が音楽を奏でるといわれたバトルならではの表現とスケーティングだからこそ成立した演技といえます。浅田真央選手の「鐘」はオーケストレーションならではの重厚感がありましたが、本来はロシア正教の鐘が静寂な中で厳かに響く、という印象の楽曲です。
 
ピアノ協奏曲第二番 第一楽章は大勢演技者がいますので一番好きな演技、1択にしました。
すいません〜