2008年シーズンよりエッジの使い分けとダウングレードの厳密化、2009年シーズンに積極的な加点による評価付けと、TESに関しては正確度と熟練度が付加価値となりました。この2つは完全に日本女子、ひょっとしたらアメリカ女子もターゲットになったかもですが、現行のルールでは日本には勝てない、という判断はあったと思われます。特に浅田真央選手はジャンプの技術に関しては非常に癖の多い選手なので狙われやすい傾向にあります。彼女のジャンプは離氷・着氷時に回転しながら動作に入っている事が多いです。これはお姉さんの浅田舞選手もそう。コンビネーションジャンプでダウングレードが多いのもそのせい。高橋大輔選手や小塚崇彦選手のコンビーネーションジャンプもその傾向があります。ダウングレードされやすい選手はたいていそんな感じの飛び方なのですが一見はクリーンなので見分けが難しいです。着氷時のダウングレードはエッジの角度で比較的見分けがつきます。身体の向きとエッジが平行でなければダウングレード判定です。足首の柔らかさ故、女子選手に多いです。男子選手は失敗ジャンプな事が多いかな。そしてダウングレードが厳密化になったので+3Loというコンビネーションジャンプが難しくなりました。というのは単独のループが腰から回るようなジャンプなのでコンビーネーションとして使うとダウンになりやすいようです。という訳で、日本選手のお家芸が封印された形になりました。エッジエラーは長野五輪で論争になったくらい(タラ・リピンスキー、ミシェル・クワン)女子選手に多い踏切の不正で、規定廃止後ジャンプの高難度化が急激に進んでジャンプの習得が急がされた結果だと思います。ジャンプの難度、これも日本が先行していましたがエッジに関してはクリーンな人は皆無に近いかも。国際的に見てもクリーンエッジは少ないです。技術的にクリーン度を要求する内容になり、その上で素晴らしい技術には加点、点数化されていた技術に多少主観的な減点ルールと加点ルールが加わり、結果旧採点に近づいている感じがあります。
PCSのスケーティングスキル(SS)とトランジッション(TR)。SSがかなり選手の「格付け」に影響してる感があり、更にTRがスケーティングの「熟練度・密度・難度」として評価を高める動きになっていると思います。SSに関しては比較的スピードがあって高難度ジャンプとジャンプコンビネーションの完全実施で点が出るところがありましたが、TRに関してはSSから0.5〜1.0位低い選手が普通で「格付け」の域を出なかったのです。ところがここ2年で急にTRがSSに迫る、または超える選手が出てきています。あくまでも「つなぎ」の評価ですので漠然として評価されていた感があるのですが「つなぎ」と意識した時に差が付けられる事に皆気づき始めたのかも知れません。
そうなると「見た印象」で決まる要素が増えた事になり、さらに旧採点に近づいた感じに。
ここで話を戻して、新ジャッジシステムが導入されたのは2002年のソルトレイクシティ五輪ペア競技での不正採点疑惑と呼ばれる騒動から。ノーミスだったカナダペアが銀メダルとなり、ちょっとミスのあったロシアペアが金となった事でマスコミを巻き込んでの問題に発展したのは周知の事実ですが、これは専門的に見比べると問題のなかったジャッジだったのです。結果としてこの騒動で生まれた、しかもカナダ主導で導入された新ジャッジシステム、目標がこの時の騒動を正当化することにあったのでは・・・・?と思う事があります。そして今の採点ルールの恩恵を受けているのははやりカナダ勢です。クリーンジャンプのジョアニー・ロシェット、TRの突出したパトリック・チャン、新採点の恩恵そのままのバーチュ・モア、加点ひとつで他を圧倒する、カナダ拠点のヨナ・キム。
ただし今の日本の場合、ルールが変わればそれに合った選手は出て来ます。織田信成選手はジャンプの加点が素晴らしいし、小塚崇彦選手は新採点の申し子とミーティングに紹介される選手、高橋大輔選手のように世界屈指のSSとTRを合わせ持った人もいます。女子も鈴木明子選手はTESが高くて減点の少ない選手です。安藤美姫選手はFSでは飛ばなくなりましたが3Fのエッジエラーを無くし、演技のクオリティを上げる方法にシフトしています。唯一心配なのがルールに捕まった感のある浅田真央選手です。
そしてその動きに待ったをかけるように復活を果たしたプルシェンコ。彼はエッジのクリーンさは極力抑えて効率的に総合点数を高くする方法を考えたような演技構成です。安定した4Tを持ってるからこそ出来る芸当かもです。そしてこのバンクーバーの後はロシア、ソチ。演技の熟練競争に飽きれば「開発」にシフトするのが人間の常なので恐らくまた少し改正されてユーロ圏スタイルが有利になるようになるのかなと予測しています。