Minato's memo

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2022年全日本フィギュア(1)女子シングル

2022年の全日本は全体的に荒れ荒れでした。前年の全日本が五輪選考会であったことの極端な緊張感があった、その翌年の大会、大阪の会場が特設リンク特有の滑りにくさがあったとはいえ、もう少し上位に来なければいけない選手がフリーでグループ2での滑走となってしまいました。大阪の会場が滑りにくいのであれば氷の質が2層になるさいたまスーパーアリーナはどうする?と思うのですが、そのあたりも経験なのかな。

優勝は坂本花織選手。こう言っては何ですが坂本選手、三原選手は全日本照準でしたね。このあたりは心理戦もありますが、坂本さんにノーミスで滑られてしまうと飛び道具のある選手しか勝てないですね。一人だけスケート靴にエンジンが付いてるような滑りでした。ターゲットにアジャストする力がやはり、五輪二大会選出されるだけあるなと思います。身体的なピークはこれからだと思います。世界選手権、ワールド二連覇は日本女子では初になります。五輪メダリストなのに、ワールドチャンピオンなのに普通にインカレ出てたりする庶民感は今までにないタイプの選手で微笑ましいですが、格を見せつけるというのも大事なのでチャレンジをしてください。久しぶりに生で見て、客席を巻き込むような高揚感のある滑り、音楽的、芸術的とはまた違う、スポーツフィギュアの良さを感じました。

2位、三原舞依選手。前年のトラウマがあるのか、とても慎重にジャンプを飛んでいました。勢いという点では少々物足りなかったですが、GPF後でもこれだけ滑るその気力が素晴らしいです。三原選手はエアリー感のある演技は心配なくノーミスできるんだろうなと思うのですが、五輪年の「タンゴ」と今回のフリーと強い曲調を滑るとミスが出やすい。タメとか、パチっと止める演技はまた違う技量なのかなと思って見ていました。6年ぶりの世界選手権、ライバルはリンクメイト、そして自分になります。

3位に島田麻央選手。彼女もJGPF後の試合ですのでなかなか厳しい戦いでした。SPは2Aにジュニア課題の3Loを3Fに。本来ならジュニアトップでもいいのでしょうけど、木下Gは滑りがちょっと課題です。PCSが思ったより貰えませんでした。まだ14歳だしね、これからだとは思うんですけど。最終Gでは気後れした印象もあり、今後はメンタルもかなり課題になるかなと思いました。FSは5位。世界ジュニアでの戦いに期待します。

で、大物ぶりを発揮した4位中井亜美選手。プレビューで「全日本で暴れてきてください」と思ったら本当に暴れてきまして。SPでちょっと出遅れてグループ3スタートだったのが良かったのか、FSで3A二発というTESで殴りにいく構成。そして、この日は滑りに力がありました。次の柴山選手がちょっと気の毒なくらい。最後のジャンプがREPなのは私も気づかず。ノーミスだったら表彰台でした。でも・・・彼女はミラノ五輪に間に合ってしまいます。ここで下手に表彰台よりは、静かに静かに2026年を迎えさせた方がいいなと思いました。美女に育ちそうですしね。そのポテンシャルを充分秘めていた今回の滑りでした。大逆転での世界ジュニア代表です。

5位、千葉百音さん。SPはシニア構成で3位。これは大きなサプライズでした。FSの得点に課題がありましたがスコアは積み上げられたのではと思います。中井選手が飛び道具的な演技で、あれをやられてしまうとちょっと太刀打ちできない。5トリプルまでの構成を極める道になるのかな。滑りに定評があります。あとは力強さかな。四大陸代表。

6位、グループ2からの追い上げ、吉田陽菜選手。混迷を極めた今回の選考、女子編ですが、彼女がもし、SPの出来がよくて、最終Gに入ってのこのFSなら、ワールドに届いたかも知れません。今季国内のカテゴリーは「シニア」だったことがその意思の表れですし、世界選手権のミニマムスコアも持っていた。JGPSでの成績は良くて、優勝の可能性もあったJPGFを「捨てて」全日本に照準を合わせて、ワールドがダメでもジュニア2番手につければ世界ジュニア代表の可能性もありましたが、その両方が潰えてしまいました。四大陸代表にはなったので結果オーライなのかな。国内シニアカテゴリーの選手がジュニアワールドに行くという初代は木下アカデミーの先輩、白岩優奈選手からですけど、彼女の今、そしてこの混迷感を思うとやっぱり、ジュニアとシニアは明確にして、世界ジュニアの代表は全日本ジュニアで決めて欲しいなと思います。6位でワールド選出するにはミニマムを持っている千葉さんを飛び越えなければいけない。じゃ千葉さんをワールド代表にするにはJGPSの成績では難しいですよね・・・。3人目は消去法でそれしかなかった、という印象です。

で、今大会のサプライズは7位に入った青木祐奈選手でした。何故ミニマム持ってない〜!!ちょっとジャンプが回転不足気味なんですね。でもそんなの関係ない!3Lz+3Loに2A+1Eu+3F、両方決めたことがびっくりです。PCSも結構出てました。都築先生の最後の全日本クラスのお弟子さん。仕上げが中庭先生ってエモすぎです。才能を開花させて、実績を積み上げる大事さ。彼女も元々は天才少女と呼ばれてました。どこかチャレンジャーシリーズの派遣があるといいですし、来季以降が面白くなりそうです。

今回の選考会で、違う意味での被害者は彼女ではと思います。河辺愛菜選手。自力は確かだよなと今回改めて思ったのですが、実績ベースでの選考が今季なら昨季は期待値。対ロシアの対抗として大技のある選手を選考したかった連盟の意思が働いたといえます。実績ベースなら今季も選考に残っていたと思うのですが、海外試合に弱いところがあるので選外に。でもよく考えたら今季のワールドは日本です。間に合った?樋口美穂子先生との相性は良さそうなので、あとは安定的な発揮力かなと思います。

渡辺倫果選手。GPFの影響と、3A持ち割と皆そうですが、連戦が苦手ですよね。やっぱり3Aを飛ぶ筋肉は瞬発系で、それは持久力に欠けるのかなと、樋口選手をみても思います。そのあたりの対策はMFアカデミーでも考えているとは思うのですが、全日本12位からの選出。先にも書きましたが消去法の結果です。で、ちょっと「エースをねらえ」を思い出してました。特待生選考に2敗したのに選出された岡ひろみに対し、全勝の二人(お蝶夫人、緑川蘭子)に負けた結果で3勝の二人には勝っているという説明が。渡辺選手は今季海外試合トップスコア+ノーエントリーからGPS初出場初優勝、GPF4位。優勝ってやっぱり強い。平均スコアがSP68点、FS130点くらいなので、表彰台に迫る力を発揮できるのかは、シーズン後半の追い込み次第なのかなと思います。四大陸に行くのがベストかはわからないですが、コロラドは高地でジャンプが浮くのでノーミスで滑る感覚を持つにはいいのかもです。メンタルケアは中庭先生にお任せして、と。

紀平梨花選手、全日本お帰りなさい。アグレッシヴに戦ったとは思います。今後怪我の完全治癒と、滑りが戻るのかが未知数ですが、長く滑って欲しい選手の一人です。何か試合があるといいですね。

住吉りをん選手、上位に入ると思ったのですが全日本の難しさですね。4T降りましたが、ジャンプがちょっと刺さりすぎ。長期的な強化を目指しているようですし、「KENJIの部屋」で好印象だったので次の試合、また頑張ってください。

SPの出来が素晴らしく、最終Gに入った三宅咲綺選手。FSは仕方がないかな。SPとFSがある競技の醍醐味ではありますが、今後は最終GでのFSの発揮力かなと思います。MFや木下もそうですが、チームの強さが際立った大会だと思います。逆に中京勢がちょっと不振。中京勢も地味に女子ストッパーが発動するんですよね。大庭雅選手のような素晴らしい社会人スケーターもいます。上手く乗り越えて欲しいなと思います。

最後にご贔屓のパピオのお二人、竹野姉妹。ギリギリでしたけどFSに残り、いい滑りでした。今季で本当に最後?国体があるのかな。リンクの休業もあったりと選手生活の困難さがありましたが、ベーシックな質の良さはいつも見ていて気持ちが浄化されていました。今回江川選手がちょっと不振で、グループ1にパピオ勢が集まってしまって、中四国九州大会のようだなと思いました。江川選手、特設リンクの滑り方は今後の課題ですね。

女子フリーはSS席で観戦できたのでかなりちゃんと見ることができました。全日本の女子ってこんな感じだったな〜と改めての体感でした。東日本の女子が落ちすぎですが、FS1〜4Gまで気を抜くところが一切ない、濃い試合だったと思います。Jスポはユーロと全米を放映してくれますが、全日本も輸出しているのかな??レベルが高いので、世界で見て欲しいなと思いました。